令和元年6月、岡山県内の観光農園が集団提訴されたと報じられました。
同農園は「保証金を預ければ月々数%の利益が入る」という副業ビジネスをうたっていましたが、平成31年2月ころから参加者への入金が停止していたとのことです。
個人の資産形成が重要となっている現代においては、本業の収入のみに頼るのではなく「副業」も重要な位置づけへと発展しています。
しかしながら、副業をうたえば参加者が殺到する状況を受けて、副業トラブルも目立つようになってきたのが実情です。
被害が多額になるケースもめずらしくないので、副業トラブルに関する正しい知識を知っておく必要があるでしょう。
副業トラブルとは
近年、収入の減少や年金制度などの諸問題から「副業」が注目されるようになりました。
本業の収入だけでは生活ができない、老後の資金などを確保できないといった問題を解決するために、さまざまな副業ビジネスが登場しています。
実際に資産形成に役立つ副業ビジネスも存在しますが、一方で副業トラブルも報告されているようです。
副業トラブルの現状
生活におけるさまざまなトラブルについて相談を受付けている国民生活センターが平成31年に発表した資料によると、国民生活センターと消費生活センターに寄せられたトラブルの件数は、年々急増しています。
たとえば、副業トラブルになりやすい「情報商材」に関する相談件数は、平成28年の2966件から、平成29年には6635件に倍増しました。
このように、全国で副業に関するトラブルが多数発生しているようです。
トラブルの特徴
副業トラブルは「誰にでも簡単な作業で高額を稼げる」といった勧誘を入り口にしていることが多いため、被害を受けやすい年齢層や性別が一定ではありません。
また、トラブルが生じるケースは、さまざまな題材を取り上げて良い副業に見せるため、一見すると問題があると気づきにくいこともあります。
被害者に出資金・参加金・登録料・会費などの名目で高額な金員を支払わせたうえで、問題が顕在化すると会社を閉鎖するなどして姿をくらませるケースもあるため、お金の回収は困難といえるでしょう。
副業トラブルの特徴
怪しい副業ビジネスを見分けて避けるためには、副業トラブルの特徴を知ることが大切です。
それぞれ見ていきましょう。
「簡単に稼げる」と勧誘する
ほとんどの副業トラブルが「簡単に稼げる」とうたって勧誘します。
たとえば、以下のような表現です。
- スマホ1本だけで稼げる
- 1日10分で稼げる
- アンケートに回答するだけで稼げる
- 動画を見るだけで稼げる
- SNSを使うだけで稼げる
- ポイントサイトに登録するだけで自動的に稼げる
誰にでも簡単・手軽に、しかも手間をかけることなくお金を稼げるようなうたい文句で勧誘するのが特徴です。
「誰も知らない」「未公開」「裏ワザ」などのように非公開の情報であるかのようなアピールを用いる場合もあります。
出資を要求する
副業トラブルでは、利益が出る前に出資を要求することがほとんどです。
ストレートに出資金を要求するケースもあれば、参加金・登録料・会費・コース料金などさまざまな名目を用いることもあります。
「仕事をするためにお金を支払う必要がある」というのは不自然なはずですが、多額の利益を生むための「投資」であると誤信させるのが特徴です。
また、継続的な出資でない場合でも、インターネット上で購入を申し込む情報商材のように、一括で多額の料金を支払わせる手口も横行しています。
インターネット広告による勧誘が多い
副業トラブルの多くは、目に入りやすく被害者を集めやすいインターネット広告を利用しています。
自動で掲出される広告やブログ記事などで「簡単に稼げる」「誰でも月収◯◯万円」といった甘い言葉をなげかけて、出資者や参加者を募るのです。
また、ポイントサイトなどに登録したところ個人情報が流出してしまい、次々と「おトクな情報」「限定募集」といった副業トラブルとなり得るダイレクトメールが配信されるようになったという事例もあります。
副業トラブルはクーリングオフの対象になるのか?
トラブルになり得る副業とは知らずに多額の契約金や申込金を支払ってしまった場合、まず考えるのが「クーリングオフ」でしょう。
副業トラブルはクーリングオフの対象になるのでしょうか?
クーリングオフ制度の対象となる形態
クーリングオフ制度は、契約を交わしたあとで消費者に冷静に考え直す時間を与えて、一定期間内であれば無条件で契約が解除できる制度です。
以下のような取引であれば、クーリングオフを行うことができます。
- 訪問販売
- 電話勧誘販売
- エステや美容医療などの特定継続的役務提供
- マルチ商法(連鎖販売取引)
- 内職商法などの業務提供誘引販売取引
ネット販売でもクーリングオフできるケース
ネット販売(通信販売)は原則として、クーリングオフを行うことができません。
副業トラブルの多くはセールスレターなどを十分に読んで自分の判断で申し込みをしたものと判断されるため、原則、クーリングオフの対象外となります。
ただし、ネット販売の場合、返品などの条件を示した「返品特約」をウェブサイトやカタログなどに明記するよう特定商取引法で定められているため、返品特約の内容によっては、返品できるかもしれません。
また、この記載に不備があった場合、商品が到着して8日間であれば返品が可能となります。
さらに、副業トラブルは、さまざまなビジネスの形態を装っているため、その題材や形態は多種多様です。
たとえネット販売であっても「マルチ商法と同様と解される」などのさまざまな理由から、クーリングオフができる可能性もあります。
返品が可能かどうか判断が難しい場合もあるので、相談機関に詳しく状況を説明して、クーリングオフ制度が適用されるのか、また、返品が可能かどうか、判断を仰ぎましょう。
副業トラブルの相談先
副業トラブルの被害に遭ってしまった、または副業トラブルにあたるのかアドバイスをもらいたいといった場合の相談先を挙げていきましょう。
国民生活センター
国民生活の安定と向上に寄与することを目的として設置されているのが「国民生活センター」です。
架空請求や悪質商法、インターネットトラブルなどの諸問題について相談を受理し、アドバイスを提供しています。
情報商材などの副業トラブルについても数多く相談を受理しているほか、裁判外紛争解決手続(ADR)の仲介もおこなっているので、具体的な解決も期待できるでしょう。
消費者ホットライン
全国に設置されている消費生活センターなどへの相談を受付ける窓口として、最寄りの窓口を案内するのが「消費者ホットライン」です。
局番なしの「188」で相談できるので、どこに相談すればよいのかわからないといったケースではまず消費者ホットラインへの相談もおすすめです。
警察
そもそも募集内容が虚偽である場合など、副業トラブルが犯罪にあたると考えられるケースでは警察への届け出も有効です。
もうけ話そのものが虚偽であれば詐欺罪に該当し得ます。
管轄の警察署への被害届または告訴状の提出が必要になります。
なお、刑事事件として相手方が処罰されたとしても、返金などのサポートは受けられないという点には注意が必要です。
まとめ
将来への不安から副業への注目度はますます高まっていますが、悪質な副業トラブルも横行しているので安易に手を出すのは危険です。
ひとたびお金を支払ってしまえば回収は困難になるので「簡単に稼げる」などのうたい文句にだまされないように注意しましょう。
副業は自分に合ったものを選ぶことが最も重要です。
しかし、詐欺まがいな内容も少なくありません。
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